1)研究室紹介

近年,気候変動に起因する局所的な集中豪雨により,洪水氾濫が頻発し,人命や資産に大きな危害を与えている.また渇水の発生頻度も増加している.今年の7月には,九州地方にて既往最大の降雨量が観測され,一方関東地方利根川水系にて取水制限が行われるなど,自然現象の極端化に伴い土木工学が直面する課題はますます困難になっているといえる.

河川・水文研究室では水理学,流体力学,水文学,河川工学といった水に関わる全ての分野に関して研究を行っている.関東地方や九州地方の実河川を用いた河道計算や,未解明の部分が多い水理現象についての実験を行っている.

最近の研究テーマとその成果を紹介する.

        利根川上流域における降雨流出再現計算および気候変動が降雨流出現象に与える影響の解明:気候変動によって降雨パターンが変化した場合,現行の河川計画が決して安全側ではないことを示した.

        湖沼・河川において水質数値解析および日本橋川現地観測による水質負荷原因の解明:観測・数値解析結果から微生物・植物・底泥による酸素消費のうち底泥による酸素消費が日本橋川において最も支配的であることを示した.

        海底面の初期形状が到達波高に与える影響:海面の隆起した体積が大きいほど到達波高が大きくなること,その非線形性を示した.

        ドップラーレーダーによる降雨データを用いた近年の降雨特性の解明:30mm/h以上の雷雨性降雨の空間分布特性を明らかにした.

河川・水文研究室は今年度から国際水環境理工学副専攻より3名の留学生が新たに研究室の仲間となり,博士2名,修士16名,学部生2名,研究生7名の計27名が所属している.今秋は国際水環境プログラムで新たに7名の留学生が中央大学に来ており,研究活動が益々活発になる.現在,研究室に所属している中国,韓国,ベトナムから来ている留学生は全12名で我が研究室の学生の約半数を占めている.彼らの勉強への積極的な姿勢は,研究室全体へより一層の勢いを与えており,日本人の学生とお互い切磋琢磨している.

学生が主体となる活動も研究室では多く行っている.学生工房,お台場Eボート大会,国家公務員講座などが主な活動である.今年10期を迎える学生工房では,日本橋常盤小学校連携を行っており,将来的に日本橋川とその周辺環境をよりよくするためにはどうしたらいいかを考えている.お台場Eボート3位入賞&特別賞を頂きW受賞することが出来た.国家試験総合職・一般職試験受験者を対象にした公務員講座は半年間教養・専門試験対策を行っている.他学科からの学生も多く毎年20名弱程が参加している.今後も山田先生をはじめOBOGの先輩方が築き上げた素晴らしい研究室に磨きをかけていく.

2) 2012年度の就職内定・進学先

国土交通省関東地方整備局,オルガノ,清水建設,中央大学大学院博士後期課程

3) 2011年度卒業生の研究テーマ・就職(進学)

○卒研生

名 前

研究テーマ

笠間雄一朗

開水路における定在波の発生条件の実験的検証

児島俊弥

都市感潮河川の出水時における溶存酸素飽和度の変動特性に関する現地観測

小杉和幹

水門流出における不確定性

櫻井一貴

日本橋川における水質変動に関する数値解析

多田総介

津波初期条件として海面上昇の体積が津波波高に及ぼす影響

保田敬介

関東地方における集中豪雨の分類と豪雨の発生特性に関する研究

山上訓広

降雨流出現象における土壌地形パラメータの特性に関する基礎的研究

米田駿星

水文学を用いた人体における放射性物質の残留量と放射線強度に関する研究

○大学院修了者

名 前

研究テーマ

相川真人

河口静穏域における土砂の堆積特性に関する実験的研究

青木 慶

降雨流出現象における流出パラメータの逆推定とこれを用いた流出計算の高精度化に関する研究

浅見龍一

都市河川感潮域における水質変化特性

磯貝二郎

屋上貯留の流出抑制効果と熱環境緩和効果

糸川和弘

局地降雨統計的発生特性に関する研究

岩本進太郎

都市河川周辺における大気冷却効果に関する研究

植平健一郎

降雨・融雪量の確率年評価に基づいたのり面防護工設計の方法論に関する研究

笹田拓也

合成合理式の理論的導出と降雨の時間解像度が流出解析に与える影響に関する研究