1)研究室紹介

 当研究室は地盤の地震時の性質を中心として,地盤防災の課題に幅広く取り組んでいます.私が中大にお世話になってから早くも満16年が過ぎ,残りは3年を切ることになりました.国際的には,これまでASCEGGE部門のジャーナル,ElsevierSDEEジャーナル,Soils & Foundations,さらに多くの国際会議論文集に当研究室の博士論文・修士論文・卒業論文の成果を多数発表してきています.特に 昨年度からこれまでに土木学会論文集にいずれも院生が主著者の3編の論文が登載され,1編が審査中です.ほかにも地盤工学研究発表会,地盤工学会関東支部発表会,土木学会関東支部発表会への多数の発表を行ってきました.

これまでの地盤防災を中心とした研究課題に加え,昨年度から自然エネルギー利用についての長期的課題として「太平洋ソーラーセル筏構想」を掲げ,その基本的可能性について日本太陽エネルギー学会や米国土木学会(ASCEEnergy Engineering Journalに論文を発表しました.この4月からは理工学研究所プロジェクト研究として中央大学技術士の方たちを中心とするメンバーからなる研究委員会を立ち上げ,技術的見通しについて検討を重ねています.内容の詳細は研究室の下記のHPをご覧下さい.勿論,学生の研究テーマの中心は引き続き,地震・地盤災害に関するものとなりますが,この自然エネルギープロジェクトは外部との協力により発展させて行きたいと考えています.

昨年度は学部4年生4名が卒業,大学院前期課程を4名が修了し,就職も添付の表のようにまずまずの状況でした.また後期課程1年の加藤達也君が事情により途中退学し,東京都庁に就職しました.今年度は大学院前期課程7名に学部生8名の合計15名です.

研究テーマとしては,まず昨年311日に発生した東北地方太平洋沖地震に対応して,関東地方の液状化災害などの調査を集中的に行っています.また,2004年中越地震と2008年岩手宮城内陸地震で起きた斜面崩壊を対象に崩壊土流動距離のエネルギー的評価法や,斜面崩壊開始・流動メカニズムのエネルギー的解明,液状化強度特性に関しては,コーン貫入抵抗・S波速度と液状化強度の関係に与える細粒分含有率の影響を調べるための特殊な三軸試験機を用いた研究,初期せん断が液状化強度に与える影響を調べるための中空ねじりせん断試験機を用いた研究などを行っています.また,解析的研究としては防災科研のK-netKiK-netを用いた地震時の地盤増幅特性の研究を進めています.

全体を通して,エネルギーに着目した現象解明を意識し,斜面崩壊・構造物被害・液状化などをエネルギーによって解釈する独自の研究路線を大切にし,問題の多い従来設計法の革新に結びつけることを目指しています.たとえば,現行の力の釣り合いに基づくFL法と新たに提案した地震波動エネルギーを用いた液状化判定法とを比較する研究を行っています.

最近は,新潟県中越地震以来,能登半島地震,中越沖地震,岩手宮城内陸地震,東北地方太平洋沖地震が相次ぎ,大きな地盤災害が頻発しています.これらの災害のたびに院生といち早く調査に出かけ,HPを通じて社会への迅速な情報公開をおこなってきました.http://www.civil.chuo-u.ac.jp/lab/doshitu/index.html

で公表していますので,皆さんもアクセスしてください.

また,1.5ヶ月に1回ほどの割合で,研究室の報告会を開いて,各研究テーマの成果を発表・討議しています.先輩諸氏にはe-mailリストなどで案内を差し上げますので,時々は参加して後輩を指導・激励してください.

2)研究室ニュース

*院生便り

本研究室における最近の一番のニュースは,ヴァージニア工科大学からラッセル・グリーン先生が来校されたことです.約2週間の滞在期間中,米国原子力施設耐震設計の講演や米国的カリキュラムに沿った基礎的分野の講義等,国外での最新の成果を肌で感じ研究意欲を高めました.またグリーン先生と共に石巻市や潮来市の被災地を訪れ自然災害の脅威や防災の重要性を再認識しただけではなく,英語で伝えることの難しさを感じましたが,例え下手な英語であってもジェスチャーを交えるなどしてコミュニケーションを取ろうと必死になれば,伝わることを次第に感じていきました.

最終日には盛大な会を設け,お酒を交わすだけでなく腕相撲にも応じて頂き,米軍仕込みの力強さを身を持って体感しました.また辛い物好きで有名な先生は常に激辛ハバネロソースを携帯し,学生が食べると唇に痛みが走る程でしたが,昼食では常にソースをかけ周りを驚かせる一面もあるといったユーモア溢れるグリーン先生でした.

32012年度就職内定先

東日本旅客鉄道(株),日本貨物鉄道(株),(株)四谷大塚,西松建設(株),(株)LIXIL,ケミカルグラウト(株),神奈川県庁,千葉県庁

4年度卒業生の研究テーマ

○卒研生

名 前

研究テーマ

新井良太郎

中空ねじりせん断試験機を用いた初期せん断応力を受ける細粒分含有砂の液状化特性

古賀洋平

原位置採取砂の液状化強度とコーン貫入抵抗における年代効果の影響

三森祐貴

東日本大震災による千葉県浦安市の液状化被害地域の原因分析

山田拓馬

ケースヒストリーによる地震時斜面崩壊・流動メカニズムのエネルギー的検討

○大学院修了者

名 前

研究テーマ

小柳智行

地震時斜面崩壊開始のエネルギー閾値についての模型実験と斜面安定性評価への適用

佐々木大輝

ケースヒストリーによる地震時斜面崩壊・流動メカニズムのエネルギー的検討~近年の地震を対象とした等価摩擦係数の逆算

日下拓哉

中空ねじりせん断試験機を用いた初期せん断応力を受ける細粒分含有砂の液状化特性繰り返し,単調載荷ねじりせん断試験による検討

福山喬久

細粒分を含む原位置採取試験のコーン貫入抵抗と液状化強度の関係

大学院後期課程1修了生

名 前

研究テーマ

加藤達也

・浸透力を用いた相似模型実験による杭の引き抜き支持力の引き抜き速度依存性

・ソーラーセル筏発電構想基礎調査