【質問】
環境にやさしい液状化対策工法について教えてください。

【回答】
丸太打設液状化対策&カーボンストック工法(LP-LiC工法)

Q:「環境にやさしい液状化対策がありますか」
 →LP-LiC工法は,液状化対策の改良材として丸太を用いることで,液状化対策を行いながら同時に地球温暖化緩和策も行うものです.液状化対策は,丸太を緩い砂地盤に圧入することで地盤を密実にします.先行回転圧入鋼管を最初に地盤に無排土で回転圧入した後に,丸太を圧入するので,低振動低騒音で建設残土を発生しません.また,周辺地盤の変位もほとんど生じないいので狭隘地での隣接施工が可能になります.材料は,薬剤処理しない丸太を用いるので,省エネで地下水汚染や地下水流遮断などの心配もありません.自然材料を用いているので環境に極めてやさしい工法です.

Q:「他工法と比較して効果やコストはいかがでしょうか」
 →対策効果は,現地で計測したN値や大型振動台実験結果を参考にすると,単に密度を増加させる以上の効果を発揮します.この理由は,丸太は地盤が大変形しても液状化せず強度を持つので容易に理解できると思います.コストは,単純比較が難しいですが,2011年東北地方太平洋地震後に浦安市で実施された「液状化対策実現可能性技術検討委員会」の結果が参考になります.LP-LiC工法は,1戸建て住宅で300万円以下,300~700万円,700万円以上の3ランクで,中でした.現状では,さらにコストダウンが図られています.

Q:「環境に対する効果は」
 →LP-LiC工法は,炭素貯蔵できるのが大きな特徴です.具体的な温暖化緩和策は,なかなか進まないのが現状のようですが,この工法を用いれば建設工事を実施しながら温室効果ガス削減に寄与できます.大雑把に言うと,工事による排出を差し引いても,改良体積当たり40kg-co2/m3の炭素貯蔵ができます.30坪で深さ5m改良すると,大凡20t-co2の炭素を貯蔵します.これは,約6年分の一般家庭からの二酸化炭素排出量に相当します.

Q:「木材の腐食の心配はありませんか」
 →液状化は,地下水の浅い地盤で生じる現象です.腐朽菌やシロアリは,酸素が必要なので水中では活動できません.したがって,打設した丸太の大部分は地下水位以深となるので腐朽の心配は全くありません.ただ,丸太頭部のみは地下水位より高くなり,また,丸太頭部以浅に大きな解放面ができ空気と接触するので,頭部は対策が必要になります.

【回答者プロフィール】

沼田淳紀(ぬまた あつのり)
S56年卒(S58年院卒)

所属・役職:
飛島建設株式会社 技術研究所 主席研究員
略歴:
1983年     飛島建設株式会社入社(技術研究所)
1984年~1986年 寒河江ダム(作業所)
1987年~1988年 土木研究所出向
1988年~    技術研究所
資格:
技術士(建設部門),博士(工学),地盤品質判定士
委員会活動:
土木学会木材工学委員会幹事長,同運営小委員会幹事長,同CO2収支評価研究小委員会委員,同地中使用木材の長期耐久性の事例研究小委員会委員,(環境省・林野庁)平成26年度木材利用推進省エネ省CO2実証業務検討委員会委員,同土木分科会委員など